【Q2】NO!パワハラシリーズ5
厚生労働省では、パワーハラスメント対策の法制化を盛り込んだ改正労働施策総合推進法に関するリーフレットを作成した。
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000527867.pdf
【Q2】NO!パワハラシリーズ4
労働施策総合推進法(パワハラ防止法)が改正 ~令和元年5月29日~
大企業は令和2年4月から、中小企業は令和4年4月から、対応が必要となる見とおしです。パワハラ防止法では事業主に、「パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務」を課しています。
第30条の2(雇用管理上の措置等)
1 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないように、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な措置を講じなければならない。
具体的な措置については、今後指針において具体的に示されることになりますが、報告書では以下の内容を示すことが適当としています。
・事業主における職場のパワハラがあってはならない旨の方針の明確化。行為が確認された場合には厳正に対処する旨の方針やその対処の内容についての就業規則等への規定。それらの周知・啓発の実施。
・相談等に適切に対応するために必要な体制の整備(本人が委縮するなどして相談を躊躇する例もあることに留意すべきこと)
・事後の迅速・適切な対応(相談者等からの丁寧な事実確認等)
・相談者、行為者等のプライバシーの保護等併せて講ずべき措置
となっており、セクハラに対し事業主が講ずべき措置をほぼ同等になると思われます。
【Q2】NO!パワハラシリーズ3
注意や指導がすべてパワハラになるわけではなく、次の3つの要素を全て含んでいるものを職場のパワハラの概念としているということでしたが、
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
の中の③ 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害することの部分を教えてください。
【A3】
身体的若しくは精神的な苦痛を感じるとは、どの程度なのかが問題になります。判断にあたっては平均的な労働者の感じ方を基準とし、一定の客観性を必要としています。「朝寝坊して大事な会議に遅刻し、上司にこっぴどく叱られ、すっかり落ち込んだ。」ということだけでは、行動に対しての厳しい指導であり、パワハラとまではいえないでしょう。しかしその後もなにかにつけ「給料泥棒だ。首になってもいいのか。甘やかされたて育ったからだ。」などと執拗に言われ、眠れない日が続いたり、胃が痛くて出社できなくなったりした場合、パワハラになるかもしれません。そしてもうひとつの就業環境が悪化するとはどんなことをいうのでしょうか。例えば、周りに人がいる中で、ある一人に毎日のように大きな声で罵声を浴びせる行為があり、周りの人がびくびくして仕事に集中できない。などの行為があります。
最初に平均的な労働者の感じ方を基準に・・・としていますが、それでも新入社員や精神疾患から復職したばかりの人に対しては、違った配慮も必要になってくるでしょう。
【Q2】NO!パワハラシリーズ2
シリーズ1では、注意や指導がすべてパワハラになるわけではなく、次の3つの要素を全て含んでいるものを職場のパワハラの概念としているということでしたが、
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
の中の② 業務の適正な範囲を超えての部分を教えてください。
【A2】
上司は自らの職位・職能に応じて権限を発揮し、業務上の指揮監督や教育指導を行い、上司としての役割を遂行することが求められます。そのような上司の適正な指導を妨げるものではなく、各職場で、何が業務の適正な範囲で、何がそうでないのか、その範囲を明確にする取組を行うことによって、適正な指導をサポートするものでなければなりません。パワーハラスメントであったかどうか判断をするには、行為が行われた状況等詳細な事実関係を把握し、各職場での共通認識や裁判例も参考にしながら判断してみましょう。
(海上自衛隊さわぎり事件 福岡高裁 平成20年8月25日 判決) 21歳の海上自衛隊員が、上司から「お前は三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ。」「お前は覚えが悪いな」「バカかお前は。三曹失格だ」などの継続的な誹謗中傷によりうつ病にり患し、自殺したとして、同隊員の両親が国に対し慰謝料の支払い等を求めた事件です。閉鎖的な艦内で直属の上司から継続的に上記のような侮辱的な言動がされることは,自殺した三等海曹の心理的負荷を過度に蓄積させるものであり,指導の域を超えるものであると判断されました。この侮辱的な言動によって,三等海曹は,うつ病を発症し,自殺したと認定されて,慰謝料合計350万円の請求が認容されました。
他方で,もう一人の上官の「ゲジ2」,「百年の孤独要員」,「お前はとろくて仕事ができない。自分の顔に泥を塗るな。」という言動については,自殺した三等海曹との関係が良好であったことから,軽口として許容できるものであるとして,違法な言動とは認定されませんでした。
発言内容そのものだけで判断するのではなく、当事者間の人間関係を重く評価しての結果だといえるでしょう。職場においては、普段からの人間関係と、指導そのものの在り方、また指導後のフォローの体制を整えていく必要があります。
海上自衛隊は,航海中,閉鎖された艦内で仕事と日常生活をしていくので,人間関係が一度こじれると,逃げ場がなく,非常につらい状況に追い込まれてしまうことが予想されます。閉鎖された組織ではパワハラやいじめが生じる温床となりやすいともいえるでしょう。
【Q2】 NO!パワハラシリーズ1
「昨年はスポーツ界でパワハラ事件が多くニュースに取り上げらました。そんなニュースが多いせいか、先日、部下に注意すると「それってパワハラじゃないですか」と言われ、何も言えなくなりました。そもそもどういうものがパワハラになりますか。
【A2】
パワハラという言葉が浸透してきたおかげで、先輩からの何かしらの言動に対し、「それってパワハラじゃないですか」と部下が「パワハラ」という言葉を使って自己防衛しているケースがあります。そもそもパワハラの定義があいまいなことが、安易に使ってしまう1つの原因になっているかもしれません。
注意や指導がすべてパワハラになるわけではありません。パワハラには次の3つの要素を全て含んでいるものを職場のパワハラの概念として整理しています。
①優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
②業務の適正な範囲を超えて行われること
③身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
となっています。とはいっても、具体的にひも解いてみないと、漠然としていますね。
まず、①の優越的な関係というところをみていきましょう。
優位になっている要素には、「部長・課長・係長といった職制上の地位の上下」「勤続年数の長さ」「専門性の高さ」「人数の力」「正社員と派遣等の雇用関係」などがあります。職場によっては「学歴や学校名」もあるかもしれません。たとえば、女性と男性で必ずしも男性が優位とは限らず、女性だけの職場に一人だけ男性が入社してきて、その男性が嫌がらせを受ける場合は、集団対個人の関係性の中でのパワハラになりえますし、新入社員が上司に対して、あいさつをしない行為は、勤務態度が悪いという評価はつきますが、パワハラとは通常呼ばないのです。ただし後者の場合で、新入社員がパソコンに詳しく、上司がPCに弱い場合に、上司への嫌がらせ目的に無視をしているのであればパワハラになりえるかもしれません。
パワハラは関係性の問題です。人が複数集まれば、規模の大小に関わらず、どの職場でも起こりえる問題です。
パワハラは、個人の問題でもあり、マネジメントの問題でもあり、組織の問題でもあります。そして、そこにはコミュニケーションの問題が内在しているのです。
部下が「それってパワハラじゃないですか」という言葉の裏には、「私だってがんばっているのに」とか「言われたようにやっただけじゃない」とか「聞いてなかった」とか「そんなみんなの前で大きい声で言わなくても」とか様々な感情があるとも考えられます。
部下の方も、上司への伝え方を学ぶことで、きちんと自分の感情も相手に理解してもらえることになり、対話が出来ていくのではないでしょうか。
どんな人間もプライドを持っていますし、価値観がありますので、お互いが日ごろから良い関係性を築いていくための、努力も必要なのかもしれません。
そこを個人だけに任せるのではなく、組織としてコミニュケーションの場を増やす工夫や研修・セミナーを取り入れた会社主導の取り組みが有効になってくるのではないでしょうか。
次回は、②の業務の適正な範囲を超えての部分をひもといてみましょう。